是々非々 稽古場対談
Azuki×わかばやしめぐみ

10/21に本番を迎えるteamキーチェーン企画公演『是々非々』の稽古に
『ゆらりゆられ』で主演を務めていただいたわかばやしめぐみさんをお招きし、
主宰Azukiとの対談をしていただきました!
今回はその様子をお届けします!



わかばやし:すごい期待して見に来て!1時間ないんですね。いや、こんなギュっと凝縮させて背景にいろんな隠されたものの想像をできるような作品を見れると思ってなかったから、むちゃくちゃ面白かったです。上質な人間ドラマを見せてもらったなと思って。ピックアップしているところがすごい良くって、 その中で語られてないものはお客さんに預けて、多種多様あるっていうか。
やっぱり人を殺すっていう行為って、ある程度超えないとそこの位置に行かない。なんとなくやっちゃったなんて人はきっといないから、人が殺人に至る決意とか衝動とか、外から見ると事件って「こんなことが起こっちゃったんだ」なんだけど、本人からするとそこに行かなきゃいけないっていうまでには、いろんな要素が積み重なっていって、その上で起こったところからスタートするのもワクワクしたし、サスペンス大好きなので。それ自体を解いていこうっていう、お客様と同じ立場の記者の人が、だんだんと犯人の方向に寄ったり、それ以外で聞いた方向に寄り添うんだけど・・・私は面白かったですね。
なぜこの題材が思いついたんだろうって。
Azuki:私が5年くらい前から、お客様が舞台上を見た時に判断がつかないことを見せてみたいと思ったの。これまでの本公演もそうやけど多角的に物事を捉えてほしい。だからこそ説明をするわけじゃなくて、目の前に起こっていることを自分の価値観で判断して欲しいって。だから「是々非々」というタイトルはお客様に当ててる。
わかばやし:なるほど。誰もがその渦中の中の存在になるかもしれない。それなのに結果的にはそうじゃないところにいる人間はみんな傍観者だから、勝手に好き勝手なこと言うし。で、また不思議なのが、みんなそれぞれ渦中の人だけど、それを引き起こした人たちが、実は無責任な人たちがいっぱいいるじゃないですか外側に。
今はネット社会とかでも、全然悪気はなかったんですって本人は言うけど、文字で起きてしまうとか、聞こえてきてしまうっていうことによって、人が傷ついたりとかやきもきしたりとか、情報過多だからこそいっぱいある。

Azuki:自分の目で。いろんなことを多角的に。
そして言葉にしてほしいという思いが強いから、あえて視覚的に見にくい演出にしてるところもある。背中を向けてる人はどういう表情をして聞いてんだろう、とか。
わかばやし:そうそうそう。こっち側に委ねられてるので、例えば笑いながら聞いてるかもしれないし、泣き顔で聞いてるかもしれないし、受け取り方は自由だから。それが1時間以内の作品には思えないぐらい厚みがあって面白いなって。今回の試みはむちゃくちゃ面白いと思います。
私は昨年の本公演「ゆらりゆられ」に出演して、家族構成のお話で愛に溢れた作品で。Azukiさんの良さはそこをお涙頂戴とか、物語だからとかにはせずに、舞台ですけどリアルに行われていて、人と人ってこういうところで繋がったり、あるいは傷つけ合ったり、お互いに思い合ったりするよねっていうのを提示するから、自分のお客様とかも、非常に感じ取ってくれてよかったね、素晴らしかったねって今も言ってもらえる作品。
Azuki:嬉しいね。
わかばやし:Azukiさんの無限性というか、観点の良さが面白かったですね。「過」も楽しみ。それはまたアフタートークショーで話せるけど。
知り合いが四国に町おこし共同体みたいなことで、そこで活気づきませんかみたいな感じで3年位いて。でも帰ってきたから色々聞いたらやっぱ難しいっていう話で…。どう難しいの?って聞いたら、やっぱりルールがあって、それを踏まえた上で、私たちと仲良くしましょうっていう圧があるらしくて。 もちろん、応じようと思った当人もいたんだけど…やっぱり都会の感覚が私には染みついてたのかなって言ってて。そこにいたかったけど、入れないんで、リタイアしちゃったと。
Azuki:この作品書く上で移住の例は調べたけど、だからと言って田舎が悪いわけではなくて。
わかばやし:そう、そうなんですよ。
Azuki:受け入れる体制を作れればいいと思うし、新しい考え方の人たちも結局抑えられてしまうところもあったりとか。お客様にも村育ちの人もいるやろうし、そういう状況下を理解できるところもあるし、異質なものが入ってくることに対する拒否感みたいなものもあると思う。

わかばやし:表向きは若い人たちにこの村を守ってもらいたいけど村にはいないから呼び込んで、都会の人は受け入れられてないんじゃない?と思っちゃうこともあるし。こんなに受け入れようとしてるのに、と、寄ってもらえてないんじゃない?の共存で。仲悪くなったとか、追い出されたとか、文句言われたとか、裏で悪口言われたとかはないんだけど、結果が田舎暮らしに疲れちゃったと。
Azuki:だから田舎だけじゃなく、人間関係って上手くしようと思えば思うほど気づかれてしまうから、継続しないとこあるやんか。 本公演もそうやけど、寄り添っていってそれぞれの立場を理解して混ぜ合わせていけば、幸せな未来があるんじゃないのか、希望が持てるんじゃないかなっていう描き方やから。だから自分の軸は何も変わってないのよね、作品を描く上で。
わかばやし:小さな歯車のずれが大きなものになってしまう。やっぱり人って1人じゃ生きていけないっていうことがよくわかる作品だったんですけど、もう壊れていくしかないっていうか、妄想を見たりとか、防御するために。すごく悲しくなって。
Azuki:自分が加害者になるかもしれんし、被害者になるかもしれへん。どういう風になるかもわからへんっていうのも含めて、遠くしすぎないで見てほしいな。
わかばやし:演じ手が、こうでしょっていう感じではなくて、どっちだと思いますか?というのが面白かったんです。皆さんご期待ください。
Azuki:はい!
わかばやし:どの人物に寄っても、考えさせられるし、上質な人間ドラマを見ましたね。また見たいと思う作品だったんで。もう村の話じゃないんですよ、日本そのものみたいな。心が揺さぶられる作品が見れました。楽しかったですね。本当にいい作品だと思うんで、大阪まで頑張ってください!